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患者さんからの?

私の所には30年以上引き籠ってしまった
悲しい患者さんが何人か来ています。
今は頑張って職業訓練所や作業所に
通っていますが、中々うまくいかないです。
もっと早くに出会いたかったと・・・
悔しい気持ちで一杯です。

ここでは、日常の診療でよく患者さんに聞かれることを
簡単に説明したいと思います。
 

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15  ひきこもりについて
 以前から社会問題になっており、場合によっては犯罪などにも結びつく重大な問題です。

 国内で年々増え続け、今では100万人以上はいるといわれております。色々な原因があり、対人関係から社会不適応を起していたり、知的や発達に問題があったりと、中には精神疾患による症状、つまり統合失調症や強迫性障害、広場恐怖などの精神疾患で、ひきこもる方もいるんです。 
 
 精神的に全く問題ない方でも、何年も家族以外に人間関係を持たないと、どんどん利己的になり人格退行していくのが普通です。

 
家族も最初のうちは何とか外に出るように、説得するのですが、しばらく説得しても変わらないと、諦めてしまう親も多いんです。中には、不憫だからという理由で母親が抱え込んでしまうケースも少なくありません。

 そのような家族に対しては強い依存関係を築くようになり、次第に恫喝や暴力へと変わり、引き籠っている人を中心に家の中で、暗黙の王様ルールが形成されます。それに耐え忍び、いつか本人が気付き、変わるのではないかと期待をして、ひたすら待つご両親も多いですが、それで改善することはありません。

 年々引き籠っている人の高齢化が進み、最近では8050問題(80歳の親が50歳の子供を扶養する)という言葉が出来、10年後には、9060問題になると言われておりますよね。財政的にも日本の将来をも左右する、誰にでも関係ある最重要課題だと思います。
 


 ひきこもりの最大の問題は外に出れないため、病院に受診もせず、福祉や施設などの介入も難しいところにあります。

 暴力がひどくなり、警察沙汰になるとか、親が亡くなることからやっと福祉や医療が介入するケースも少なくありません。かといって、家族や自分の力だけで克服するのは難しく、ひきこもりの時間が長ければ長い程、社会復帰は難しくなります。


 
 では、どうすればひきこもりを克服できるのでしょうか?

 まず一番大事なのは上記にも述べましたが、
精神疾患の有無を見逃さないことです。統合失調症強迫性障害などは、幼少時は問題なく、ある時を境に症状が出現することが多いです。昼夜逆転、幻覚、妄想、強迫行為などの症状を認め、一切外出が出来ず、やたら外を気にする、過剰にカギをつける、窓に目張りをするなどの異常行動も伴うことが多いです。

 そのような場合は両親だけでも医師や保健所に相談し、何とか薬物の投与が出来れば、ある程度症状の改善が期待できます。精神症状が原因で自傷他害の症状が出た時には、警察をすぐに呼んでいただき、その場で強制入院も可能です。入院して病気を治せれば、普通に社会復帰のリハビリが出来るようになりますよ。

 



 引き籠りの原因として圧倒的に多いのが「発達障害」「知的障害」を含む性格の問題からなる人です。

 
この場合は不登校から連続していることが多く、上記のような、完全な引き籠りではなく、昼間仕事には行けないけど、夜間に買い物、コンビニ、遊びには行ける。イベントやコンサートには行ける、一日中ゲームやネットには熱中出来ることが多いです

 本人が危機感を覚え、医療福祉機関を受診し、知能検査をすれば診断は可能であり、診断がつけば障害者手帳や療育手帳を申請し、職業訓練所や作業所などを利用することが出来ます。しかし長期に引き籠っていると、外に出るのが怖くなり、就労意欲がなくなり、本人も拒否をしますので、そこまで繋がらないことが、圧倒的に多いです。

 因みに知能検査を行うことで、障害の有無に関わらず、就労能力、その人が一般で就労出来るのかどうかも解ります。私は個人的に精神的な理由で生活保護になっている人は、全例知能検査を施行すべきと考えております。



性格的な問題で引き籠り、本人が受診を拒否している場合、
大事なのは同居している家族の接し方
です。

   
 ご両親が相談に来た時に、まず私が勧めるのは、今後本人との約束事、取り決めは必ず文書で行い、後で確認できるようにしておくこと。そして最初は低額で良いので、きちんと
家賃を払わせること、手伝いや、約束事に対し、その都度報酬(お小遣い)を渡すことです。

 無条件で何か与えるのは止めて、金銭などを渡す時、何か買い与える時には必ず交換条件を提示して下さい。一度に多額の金銭を渡す事はお勧めしません。その場合は借金という形にし、返済期限と返済できなかった時の対処法を記載した借用書を必ず作成して下さい。

 そのようなことを提示した時に、本人がもう少し休みたい、ゆっくりしたい、今考えてるので、刺激しないで欲しいというのであれば、具体的にいつまで待てばよいのかを決めること。ご両親が年齢的、経済的に、あと何年援助(扶養)出来るかという期限を前もって伝えておく事も大事です。

 引き籠っていても無条件で衣食住が手に入る、ゲームやパソコンを1日中、好きなだけ出来る、そんな快適な生活環境を提供しているうちは、絶対に良くなることはないということを、きちんと自覚してください。



 引き籠りで、最初に治さなければいけないのは、毎朝きちんと起きることです。朝起きられなければ、就労はおろか、医療機関や支援センターの利用は出来ませんし、何も始まりません。とにかく朝早く決まった時間に起きた日には、お小遣いを渡して下さい。金銭でなくてもPCやネットに触らせる、数日間きちんと起きたら、欲しいものを買い与えるのも良いと思います。

 朝起きるなんて、普通で当たり前のことと考えている方も多いですが、発達障害のある方には非常に難しいことです。それ以外でも、朝挨拶が言える、清潔管理、毎日入浴が出来る、決まった時間に食事が取れる、就寝時間を決められる、部屋の掃除が出来るなど、どんなに当たり前で、どんなに小さなことでも、今まで出来なかったことが出来るようになった時に、本人を褒めましょう。

 そのやり取りから、親子の信頼関係を取り戻せれば、本人の自信にも繋がると思います。(幼少時のことを思い出してください)



 朝起きれるようになったら、
朝玄関を開けて外を2,3歩、歩くこと、それが週に5日、出来るようになれば、その人の未来が見えてきます。
出れた日、出れなかった日をカレンダーに付けることをお勧めします。

 玄関前2,3歩から家の周り一周、近くのコンビニ、公園など行動範囲を広げていき、報酬も値上げして下さい。ある程度、行動範囲が広がれば、地域の生活支援センターやB型作業所などの利用に繋がります。

 最初は週に1〜2日でも良いので、人の中に居るという経験をさせ、挨拶、謝罪、謝礼の練習から、嫌な人、嫌いな人との付き合い方を学んでもらいます。

 週に5日通えるようになれば、A型作業所、障害者枠雇用などから社会復帰を目指し、自分でお金を稼ぎ、自分の力で生きていくという喜びを知ってほしいですね。


 
同時に家の中で文書でのルールを作成し、作成したら、口頭での指示や指導、愚痴、小言、否定的な言葉などは一切言わないでください。規則正しく通所したり、家事を手伝った時には、必ず金銭を渡すことと、そこから毎月家賃を払わせること。頑張れば報酬が貰える、生きるためにお金が必要であるということを教えてほしいです。

 発達障害や自閉症の中には金銭欲や物欲が全くない人もおります。でも現代社会では消費をしなくても、生きていくだけで家賃、光熱費、食費、通信費、など全てにおいて、金銭がかかることを教えて下さい。金銭で縛れないのであれば、その子にとって何が困ることで、何が嬉しいことなのかを見つけ、その中でルールを作成すると良いですよ。





 このような家でのルールや約束事を文書で本人に提示しても、最初は守らない、守る気がない人の方が圧倒的に多いです。そこで必要なのが、罰則設定(一定時間ゲームネット禁止、罰金など)なのですが、それに反応して暴力、恫喝 破壊行動があるのであれば、迷わず
警察(生活安全課)を介入させて下さい。

 警察を介入させることを世間体的に拒む人も多いのですが、暴力行為まで発展している、ひきこもり状態を家族だけで解決するのは不可能ですし、経験豊富な警察官であれば、その辺の事情も理解しておりますので、躊躇せずに相談して下さい。

 近所のことを気にするのであれば、日中に家族だけで先に警察署に相談に行き、夜暴れたら呼ぶことを、前もって伝え、その際には私服で来てほしい、パトカーのサイレンを鳴らさないで来て欲しいとお願いすることも可能です。

 また、性格の方は精神疾患と違い、相手によって態度を変えることが出来ます。国家権力を持っている人には、強く出れないことも本人は、よく解っております。ですから、家族よりも、警察官の指導の方が効果ありますよ。その際には、きちんと謝罪をさせて下さい。私の経験では、一度でも警察を呼ぶと暴力や暴言がピタリと収まったケースは非常に多いです。

 中には、自分の人生を台無しにしたのは育てた親のせいであるから、一生面倒見るのは当然と豪語し、暴言暴力を正当化、多額の金銭や、時に土下座を要求する人もいるのですが、その脅しには絶対に屈服しないでください。一度でも言うことを聞くと、そのことが当たり前になり、王様ルールは絶対になっていきますよ。

 また、自殺を仄めかす言動やリストカット、大量服薬などを脅迫の道具として使う人もおりますが、私の経験では、そのような人は、まず成功しません。そのことに反応せずに、冷静に、そうするかどうかは、本人が決めることであると伝えましょう。冷たいようですが、もし万が一、成功したとしても、それがその子の運命であったと考えてください。


 もし警察を呼んだ後に家族に報復(暴力)をするようであれば、何度も何度も呼び警察官から厳しく叱ってもらって下さい。怪我をした場合は診断書を取り、傷害事件として提訴する、一時的に留置してもらうのも良いと思います。

 とにかく「自分の思い通りにならないと脅す暴れる」という今までの王様ルールを変えなければなりません、反社会的行動にはきちんと法的な自己責任がついてくるということを、本人に学ばせて下さい。

 

 何度警察を入れても、家でのルールが全く守れないのであれば、同居は不可能ですので、生活保護
にして一人暮らしか、矯正施設に入所をさせることをお勧めします。最近では、引き籠りに一人暮らしをさせ、援助してくれる自立支援施設や、男性数人で迎えに来て、無理やり車に乗せ、遠方の施設に入所させてくれるところもあるみたいですよ。

 もし本人が家から出ないのであれば、家庭内暴力の被害者シェルターを利用したり、一定期間でも親が家出をするように勧めております。子供の将来の為に、今の家を引き払って親だけ引っ越すのも良いと思います。

 




 私の経験では、引き籠っていた状態から、自立に行きつくのに早くて2年、長い人だと10年以上かかります。途中で何度も挫折し、再び引き籠る方も多く、時に暴言、暴力なども認めることもあり、本人も家族にも大変険しい厳しい道だと思います。でも諦めずに、ゴール(自立)に行きついた時の感動は何にも代えがたいものです。「やっと仕事が決まりました!」「一人暮らしを始めました!」のセリフには、私も、つい涙が出てしまいますね。




 テレビで流れる凄惨な事件の加害者や被害者には、数多くの引きこもりの存在が見受けられます。その多くは、福祉や医療に繋がらず、親が諦めて子供の言いなりになっていたケースです。

 私が診てきた患者さんの中にも、成人した息子に生活保護の方がお金を貰えるからと、ハローワークに行かせない親や、自分の介護をさせる為に子供に仕事をさせず、ずっと家に居させる親、精神的に不安定になるから息子に就労の話をしないで欲しいと頼んでくる親など、、、、、

 中には、子供が一生食べるに困らないくらいの財産を残せればと、必死にお金を貯めていた親もいましたが、金額的には莫大になりますし、お金だけあっても生活能力がなければ、生きていけません。

 


 結局、親が亡くなった後に彼らは困ることになり、
将来を悲観して、自暴自棄になり、殺人や自殺につながることもあります。

 「育児」というのは単に子供に苦労をさせずに、大人にすることではありません。
一人で生きていけるスキルや教養、作業能力や対人コミュニケーションを身につけさせ、
いずれ親が亡くなった後にも子供が生きていくのに困らないようにすること、それこそが真の「育児」なんです。


 
 皆さんも幼稚園、小中高学生時代や就職、結婚などでさまざまなストレスや挫折などを経験していますよね?。そういう経験から、うまく社会でやっていく人間関係のとり方や、自分の感情のコントロールの仕方を知らないうちに学んでいるはずなんです。(親が学べる環境を作ってくれたと言っても良いかもしれません)

 しかし、ひきこもりの患者さんに関しては、幼少時の頃から、逃げてばかりいたり、家族がさせなかったりして、社会性が身につかず、うまい対人関係の取り方や感情のコントロールが出来ないのです。逆に言えば出来ないのが当然なのかもしれませんが・・・。
 
 
 本人もそのことで悩んでいることが多いので、いきなり仕事を勧めるとか追い出すのではなく、「何故周囲とうまくいかなかったのか?」を本人にも理解させることが必要になります。そして自分の将来のこと、今後生きていく為にはどういう方法があるのかを、彼らと一緒に考えていくことが大事なんですね。

 
 また、ひきこもりの問題には、家族以外の第三者の介入が必要です。その場合は精神保健センターや市役所の福祉、もしくは医療機関に家族だけでも相談すること、現在では、どこの自治体でも引きこもりの対応マニュアルが出来ておりますし、利用可能な生活支援施設の紹介や、相談員の手配などもしてくれるはずです。

 「親が諦める」ということは「本人を見放す」ということと、同義であり、
待っていても事態は変わらず、悪化するケースが多いですよ。
 

 
 
 とにかく家族が家の中の問題で解決しようとせず、諦めずに福祉や医療、場合によっては警察に相談することが大事です。その子の未来を考え、見守りながらも、時に厳しく突き放し、親としての責務である「育児」を頑張ってください。手伝ってくれる人は沢山いますから・・・

眠い?


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ここでの文章での文責は 竹川 敦です。
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