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患者さんからの?

昔テレビで「自分が動いた時間を
元に戻さなければいけない」という
強烈な強迫観念の患者さんを見たことがあります。
彼は動いた後は必ずビデオの「逆戻し再生」のように
動かなければいけないんです・・・
見ていて本当に気の毒でした。

ここでは、日常の診療でよく患者さんに聞かれることを
簡単に説明したいと思います。
 

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10  わかっているけど止められないんです。(強迫観念とは)
 皆さんは強迫という言葉を聞いて何を連想しますか?普通に考えればヤクザに強迫されるとか、強迫電話がかかってくるなど、あまり良い意味ではありませんよね。
 
 精神科領域では不合理で馬鹿げてとわかっているがその考えを打ち消せず、何度も考えてしまったり(強迫観念)同じ行動を繰り返してしまったり(強迫行為)心配になって何度も確認してしう(確認行為)症状のことをいいます。

 これらは本人が不合理と解っているということが非常に大事なんですね
 
 実際に外来でよく聞く症状挙げますと
「手にばい菌が付いているのではと、何度も手を洗ってしまう」
「家に泥棒が入るのではないかと、何度も戸締りを確認してしまう」
「仕事でミスをするのではないかと、何度も自分の仕事内容を確認してしまう」
[何か物事を行うときには、必ずこの順番でないといけない」
「色々な場面で数字や数にこだわる」「トイレがない場所に行けない」
などが一般的に多い症状ですが、それ以外にも、


「自分の臭い体臭が周りの人に伝わっているのではないか?」(自己臭恐怖)
「周囲の人が醜い自分のことを、変に見ているのではないか?」(醜形恐怖)
「いつか犯罪を犯したり、自分の子供を殺してしまうのではないか?」
「学校で皆に悪口を言われ、いじめらているのではないか?」
「会社に行く途中に吐いて、体調が悪くなるのではないか?」
「家に盗聴器や監視カメラがあるのではないか?」
「いつか大地震や大津波が来るのではないか?」

 などなど、聞き様によっては「妄想」のように取れる内容もありますが、大事なのは「〜ないか?」の部分で、これらはどれも本人は「そんなことはない」「そんなことは無意味」だとしっかり自覚しているんです。わかっているのに考えを止められないのが辛いんですね。(確信ではなく疑惑なんです

 ちなみに、そうすることに何も疑問を感じず、確信しており、他人が指摘しても是正不能であれば、強迫症状ではなく「妄想症状」です。その場合は、統合失調症などの病気が考えられます。
 
 
 この「強迫観念」という症状は色々な精神疾患、性格障害などで認める症状です。有名なのは強迫性障害(強迫神経症)という精神疾患ですが、パニック障害(広場恐怖症)や社会不安障害、醜形恐怖症、心気症などの様々な神経症圏の病気で認めます。


 また発達障害やアダルトチルドレン、境界型人格障害などの性格障害で認めることも多く、外来で患者さんが訴える症状では「うつ」の次に多い症状なんです(自覚していない人がほとんどですが・・)
 

 先に挙げた神経症圏の疾患は、今までストレス因で起こると思われておりましたが、最近では脳内の神経伝達物質に生物学的に異常があることが解ってきました。

 詳細は今のところ不明ですが、精神を安定させるセロトニンという物質が少なくなって、このような症状が起こると考えられております。


 ですから治療としては薬物療法が主体になり、パニック障害同様SSRIという種類の抗うつ剤が効果があります。しかし強迫性障害にSSRIを使用する場合、うつ病の抗うつ効果やパニック障害よりも効果発現は遅く、大体2ヶ月くらいかかるのと、内服量もうつ病に比べて多く必要です。

 ルボックスなら200mg以上、パキシルなら40〜50mg、最初は抗不安薬も併用、2か月以上内服して効果不十分であれば増強療法として非定型の抗精神病薬かセディールを使用することが多いです。

 ほとんどの方が2ヶ月くらいの薬物療法で楽になるのですが、症状を全く無くすことは不可能であり、1〜2割くらいは症状が残ってしまう方が多いです。(内服中止までは1〜2年くいらいかかります。)

 また発達障害やアダルトチルドレンなどの性格障害から来ている強迫症状の多くは、一過性なのですが、薬剤に抵抗性を示すことが多く、ストレスで容易に症状が悪化しますので、多くの場合、治療は難航します




 確認行為や強迫行為は、それらを行うことで不安や苦痛は軽減するのですが、逆に
強迫行為が出来なくなると不安症状が悪化し落ち着かなくなることが多いです。ですから薬の効果が出てこない間は、あまり無理に確認行為を止めない方が良いです。(積極的に確認してください)
 
 薬がある程度効いてきても効果不十分な場合は、暴露反応妨害療法や認知行動療法と呼ばれる治療法があります。

 これらは強迫観念から強迫行為のある人にのみできる療法で、わざと強迫行為をさせなかったり、強迫行為をする時間を遅らせたりする行動療法です。しかし強迫観念のみで行為が無いケースは出来ないんです。
 
 強迫観念というのは非常に苦痛を伴います。

手の皮膚が血だらけでボロボロになっても、石鹸で手を洗い続けたり、
不潔だという理由で部屋中消毒液をまき外に出れなくなったり、
入浴や洗顔、トイレに異常な時間を費やしたり、
外の埃が気になり外に出られず、不登校や出社拒否になったり、
他人の視線が怖くて、一人も友人を作れなかったり
忘れ物が気になり家に戻るため毎朝遅刻をしたり、
仕事が終わったのにミスが気になって会社から帰れなくなったり、
自分が何か悪いことをしないように、常に自分で両手を縛っている人もいました。

 そんなことを気にしなくてもいいことを解っているのに、気にしてしまうというのは、ある意味、妄想と同じくらい辛いのだと思います。本当に気の毒で可哀そうです。こちらも辛くなりますよ。

 このように強迫観念というのは、その人の社会生活に多大なる支障をきたす重篤な精神疾患なんです。他の精神障害と比べて自殺率も高いですよ。

 もし思い当たる症状があれば、早めに病院を受診することをお勧めします。薬を内服することで必ず症状は軽減しますよ。

相棒・・・


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ここでの文章での文責は 竹川 敦です。
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