パニック障害というのは、最近メディアなどでもよく耳にする言葉ですね。これは精神疾患の病名であり、DSM−Wという診断基準の中で神経症性障害の中の不安障害の中に分類されています。
神経症というのは昔からストレスに対する防衛機制(たとえば、抑圧や置換、昇華など)の破綻で起こるものと言われており、治療にはカウンセリングが主体と考えられておりました。
しかし、パニック障害に関しては、明らかなストレス因子の存在しない方のほうが多く、遺伝的要素も強いことから、最近では脳内に生物学的に異常があることが解ってきております。
ちなみに強迫性障害、社会不安障害、全般性不安障害も同様な原因で、先に述べた神経症のような防衛機制の破綻でおこるのではないんです。
脳内にパニック誘発物質といわれているものがあり、その異常放電によって自律神経の症状が発作的に起こるのです。すべての人がなりえる病気ではないんですね。
ちなみに同じカテゴリーに分類されている「強迫性障害」「社会不安障害」「全般性不安障害」も症状の基本は強迫観念であり、同様に脳内ホルモンの異常で起こる病気と考えられております。
具体的な症状としては、原因無く突然襲ってくる動悸や呼吸困難、発汗、震え、胃部不快、手足のしびれなどの自律神経症状ですが、中には知覚の異常や、離人感(自分が自分でないような感覚)を訴えることがあります。大体10分でピークに達し、30分以内に症状が消失するのが特徴で、発作の最中では多くの方が死を覚悟するくらい辛いんですよ。
一度その発作を経験すると、「また起きるのではないか」という予期不安や、発作が怖くて外に出れない、乗り物に乗れないという広場恐怖という症状を認めることもあります。
この症状で患者さんは自ら行動範囲を狭くし、社会的に著しい障害をきたし、仕事場まで行けず職を失ったり、引きこもりの原因になることもあり、決して軽い病気ではないんです。
同じような症状をきたす疾患としては、発作性の不整脈やてんかん、周期性四肢麻痺、転換ヒステリー(過換気症候群)などがありますが、発作中の症状が多彩で特定の状況や時間には関係なく起こり、持続時間が10〜30分で必ずおさまることがパニック障害の最大の特徴です。
ちなみに転換ヒステリーの方は、性格的な要素も大きく関与し、昔にも同じような経験をしており、発作の時には明らかなストレス因が存在(決まった状況、場所などで起こる)し症状も長時間続くことが多いです。
この場合は内服薬で改善することはなく、性格因をはっきりさせることと、発作を起こす環境を避ける、もしくは徐々にストレスに慣れさせることで良くなります。
パニック障害の治療としてはSSRI(パキシル、ジェイゾロフト、ルボックスなど)という抗うつ剤が非常に効果があり、発作の頻度を減らすことが出来ます。ただ効果が出てくるまでに大体8週間と時間がかかるので、その間は即効性のある抗不安薬を併用することが多いです。
薬を飲んで頻度が減っても忘れた頃には又発作が起こることも多いです。発作が起きても「自分の持病である」と慌てず、必ず元に戻るとやり過ごすこと、抗不安薬を常に携帯して不安になれば、すぐに飲むことが大事です。また50%の確率でうつ病を合併することがありますので注意が必要です。(治療は変わりませんが・・)
私の経験では「パニック障害」と診断治療して、良くならなかった患者さんは一人もいません。他院で治らない患者さんと紹介されている方の多くはパニック障害でなく、先に述べた転換ヒステリー発作でした。
きちんと診断、そして治療すれば治る病気ですので、苦しんでいるのであれば是非病院を受診してください。
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