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患者さんからの?

「私の頭の中の消しゴム」「明日の記憶」「半落ち」
など認知症を題材にした映画は数多くあります。
どの作品にも共通するのが
認知症は本人にも家族にも悲惨な病気である
ということです。

ここでは、日常の診療でよく患者さんに聞かれることを
簡単に説明したいと思います。
 

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8  家族に物忘れが始まったらしいのですが・・・
 認知症というのは誰もがなりたくないですよね。皆さんは、治らないイメージや食事したのを忘れたり徘徊したりする印象を持っているんではないでしょうか?確かに進行すれば、そのような症状も出るのですが、初期には症状目立たない方が多く、本人にも辛い病気なんですよね。
 
 認知症の原因としては、脳の血管が閉塞して起こる脳血管性痴呆と脳の神経細胞が脱落し、脳が萎縮して起こるアルツハイマー型痴呆とで日本人の認知症の9割を占めるといわれております。どちらも非可逆性のものであり、有効な治療法はなく予防が非常に大事です。
 
 脳血管性痴呆は動脈硬化性の基礎疾患(例えば高血圧や糖尿病、高脂血症など)が併存している方が多く、予防にはそれら基礎疾患のコントロールが必要です。

 あとは抗血小板剤という血液を凝固させにくくする薬を内服することも進行を止めるのに有効です。それに対し、アルツハイマー型は今のところ原因不明の変性疾患であり、女性に多く遺伝的要因が大きいと言われております。

 治療薬としてはアリセプトを始めとして色々と出ておりますが、どれも脳内で減少したアセチルコリンという神経伝達物質を増やす働きがあり、アルツハイマー型痴呆症の進行を遅らせる働きがあるようです。

 重度の痴呆には効果ありませんが、アメリカでは若年でも物忘れがあると服用させているらしく、初期に内服すれば認知症状の改善があり、病状の進行を遅らせることが出来ます。(ちなみにメマリーという薬だけは神経細胞のシナプスそのものに作用し神経伝達毒性を少なくする薬剤です)
 
 生活面ではとにかくリハビリですね。最近では介護保険が充実しており、日中リハビリ目的に預かってくれるデイサービスの利用が効果的です。

 出来るだけ一人で家にいるのではなく、人と会話をしたり、趣味に打ち込んだり、細かい手作業をすることで脳に刺激を与え、痴呆の予防効果、改善効果があります。

 とにかく興味を持つこと、笑うこと、気を使うことが大事ですね。ちなみに介護保険ではベッドや車イスのレンタルや家の改造、訪問看護婦、訪問リハビリ、介護負担軽減のために何日か預かってくれるショートステイなどの利用が出来ますよ。
 
 

 認知症の初期症状としては物忘れよりも、人格変化や抑うつ症状が多いです。それゆえ最初の頃は、うつ病や神経症などと診断されてしまうんですよね。

 しかし、症状が進行性なことと薬物の反応が極めて悪いことが、認知症の特徴です。物忘れが自覚出来るようになる時期になると、自分に認知症が始まったと認めたくないゆえに、非常に苦痛を伴います。仕事や家事などでもミスが目立ち、周囲からは「ボケている」と言われ、自己嫌悪に陥る方が多いですよ。
 
 認知症が進行してくると、記銘力障害(特に最近のこと)、失行、失認(服が着られない、道に迷うなど)実行機能障害(買い物や料理が出来ないなど)と、誰もが認める中核症状と言われる症状を認めるようになり、それに伴い、ある特定の人だけに認めるやっかいな周辺症状、(例えば夜間徘徊、幻覚、妄想や暴言、暴力、引きこもりなど)も認めます。

 
介護者に大きな負担となるはこの周辺症状であり、一晩中常に見張らないといけない、疑われる、怒鳴られる、殴られるなどで多くの介護者は疲労困憊状態となります。

 認知症の患者さんには妄想と同じように、説得は無意味ですので、向精神病薬の投与が必要になるケースが多いですが、薬にはめまい、ふらつき、転倒などの副作用もある為、ADLを下げずに少量から調節していかなければなりません。(最近では抑肝散という漢方薬が副作用もなく、認知症の周辺症状によく効きます)

 
 さらに病状が進行してくると、時間も人も自分のことも何も解らなくなり、幻覚や妄想、暴力などの周辺症状は治まることが多いです。

 日中はボーっとしていることが多いですが、穏やかな性格となり、よく笑顔が見られるようになります。その後は徐々に寝たきりとなり、しゃべれない、食事も取れない状態になって最期を迎えるんです。

 アルツハイマー病の平均余命は以前は8年くらいと言われておりましたが、現在は内服薬のおかげで12年〜15年くらいと言われております。

 ちなみに寝たきり状態(自分で寝返りがうてない状態)になれば肺炎などの合併症のリスクが増すため、もっと余命は短いです。

 寝たきりになる原因で一番多いのは入院で、後は風邪と転倒です。高齢者というのは、現病の治療よりも予防とリハビリ、いかに入院させず、寝たきりにさせないかが重要なんです。
 

 これからの高齢化社会で認知症患者さんの対応というのは深刻になると思われます。最近は介護保健制度が出来たことで家族の負担はかなり減りましたが、まだまだそれを知らずに、家族だけで介護している家族も多いです。

 寝たきりで認知症状の患者さんを家で一人で看るのは、まず不可能であり、その人が自分の人生を全てその人に捧げるようなものですし、いずれストレスが溜まりイライラしてその人に当たることになるでしょう。

 私個人の意見としては介護は絶対に義務で行ってはいけません。少しでもその人のことを「自宅で看てあげたい」という気持ちが無ければ無理なんです。
 
 そうならないためにも家族の方だけでも医療機関を受診し、介護保険を導入し(市役所で申し込みます)家族以外でも一緒に介護してくれる人を作ることを強くお勧めします。
患者さんとの思い出話神様がくれた病気、認知症」是非読んでみてください。

絶対渡さん


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ここでの文章での文責は 竹川 敦です。
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