仁和医院ホームページ
п@047(358)7321
ホーム 診療方針 所在地 診療時間 患者さんからの? Drプロフィール 掲示板 リンク集  私の診断・治療法
患者さんからの?

最近になって注目された非常に診断が難しい病気で
今のところ有効な治療法がありません。
色々と内科を回り最終的に精神科に来る方が多いです。

ここでは、日常の診療でよく患者さんに聞かれることを
簡単に説明したいと思います。
 

| 前の質問 | 質問内容の目次に戻る | 次の質問|

19  風邪の後に倦怠感が取れません(慢性疲労症候群)
 最近このような訴えを主訴に受診する患者さんが増えてきました。内科で精査しても全く異常がなく、精神的なものではといらっしゃるのですが、ひどい人になると何ヶ月も寝込み、仕事に行けなくなる方もいるんです。

 精神科的に明らかなうつ病や環境による適応障害、元々の性格因などの診断がつけば治療の方針も立つのですが、どうしても精神疾患としては考えにくい方もいるんですよね。その場合、僕達は非常に悩むのですが、そのような患者さんの中で慢性疲労症候群という病気の存在が注目されるようになりました。
 
 慢性疲労症候群というのは、何らかの感染症の後に免疫学的に異常を来たし、極度の疲労感を認めるようになる病気です。診断基準には疲労感の他に微熱や咽頭痛、リンパ節腫脹、筋力低下、関節痛などの身体症状が6ヶ月以上持続するとあります。血液検査では抗核抗体(リウマチなどの病気で陽性になる値です)が25%で陽性になる以外、特異的な異常は認めないんです。

 そのため内科で血液検査をしても問題が無く、症状も良くなったり悪くなったりすることから、精神科や心療内科に紹介する医師も多いと思います。精神科医や心療内科医も内科で検査して異常ないのであれば、精神的なものと判断し色々安定剤を服用しても良くならずに、難治性うつ病や気分変調症と診断され、治療されている患者さんも多いんですよね。
 
 慢性疲労症候群を疑うのに一番大事なのは、発症経過と身体所見です。発症する少し前に、風邪を引いたり、熱が出たりなど感染症を起こしていなかったかということですが、人によっては膀胱炎などで知らないうちに感染症を起こしていることもあるようです。身体所見としては、リンパ節の腫脹や、咽頭の発赤、関節の圧痛の有無などを診察することが大事です。

 それらの身体所見は風邪をひいた時などにも一過性に認めるのですが、長期に持続していることが特徴的です。最近になって急に何度も風邪を繰り返していたり、すぐに熱を出すのも免疫学的に異常がある可能性があります。
 
 発症した時に精神科的に異常がないことも大事なのですが、発症すると辛い疲労感が続き、一日中横になっていたり、家事や仕事も出来なくなります。病院に行っても異常がないと言われてしまい、自分は怠けているのではという自責感から二次的にうつ状態になったり、不安や緊張を伴っていることも多いです。

 実際うつ病と関係があるという報告もあるんですが、精神科的な特徴としては、とにかく症状が長期に続くことと、環境にあまり左右されずに症状が変動すること。真面目で高学歴な女性に多く、発症するまでは、社会的に全く問題なく過ごされている方が多いですね。
 
 治療としては今のところ確立されていないのが現状です。免疫学的な異常ですので自己免疫を強くする漢方薬(補中益気湯)やビタミンB、C、抗不安薬やSSRIなどの抗うつ剤が有効と言われております。しかし、一時的に良くなっても周期的に寛解と悪化を繰り返すことが多いです。

 うつ病のページにも書きましたがうつ状態というのはその人の免疫力を下げると言われております。実際うつ病の患者さんで、悪性腫瘍や心疾患の発症率が上昇するという報告もあるんですね。ですから日常生活でもストレスをあまり溜めずに、趣味や好きなことなどに打ち込み、出来るだけ笑顔を作ることも大事なことと思われます。
 
 慢性疲労症候群と同様に最近注目されている病気の中に繊維筋痛症という病気もあります。病気の原因は慢性疲労症候群と同じように免疫学的な異常から起こるといわれており、レントゲンや血液検査でも異常ありません。日本では未だに診断基準さえも出来ていないのですが、症状としては筋肉、骨格の痛みと疲労感、睡眠障害が主症状で長期に続きます。リウマチのように関節が痛いのではなく、肩甲骨や骨盤などの大きな骨や、筋肉や軟部組織にもなどにも圧痛を認めるのが大きな特徴です。

 また、間質性膀胱炎を合併し、耐え難い夜間頻尿を認めることもあるようです。慢性疲労症候群と同様に精神症状を合併することも多く、うつ病などとの鑑別も困難です。治療としては慢性疲労症候群と同様に安定剤や抗うつ剤、ビタミン、漢方薬などが有効なこともあります。
 
 慢性疲労症候群も繊維筋痛症も、まだまだ世間には知られていない病気で、その存在を知らない医師も多いです。しかしながら症状は非常に重篤でありその疲労感や筋痛から、仕事に行けなくなったり寝たきりの状態になったりすることがあるんですよね。うつ病とも関係があると言われており、特異的な検査所見も無いことから、非常に診断も難しく、今のところ有効な治療法も確立していないのが現状です。しかし、決して良くならない病気ではないので、可能性があるなら、医師に相談し、場合によっては専門の医師を紹介してもらうことが必要です。

こたつの上にて


ホーム 診療方針 所在地 診療時間 患者さんからの? Drプロフィール 掲示板 リンク集  私の診断・治療法


ここでの文章での文責は 竹川 敦です。
niwaiin@yahoo.co.jp ご意見・ご質問等のメールはniwaiin@yahoo.co.jp にお願いします。