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当たり前ですが、人には色々な人生があります。 波乱万丈な人生もあれば、平凡な人生もあるでしょう。 悲しい人生、苦しい人生、幸せな人生、楽しい人生・・・ 運命という名の歯車に翻弄されて、本人の意思ではどうすることも出来ずに、 色々なトラブルやアクシデントに遭遇し、困難で厄介な状況にもなるのですが・・ 「神は耐えられる試練しか与えない。」 少し前に「仁」というドラマで聞いた昔の日本を象徴するような言葉です。 どんなに苦しくても酷い経験をしても、 決して弱音を吐かず、とにかく頑張る、ひたすら耐える・・・ いつか報われる日を信じて・・・・ (ちなみに私はあのドラマ大好きです。) 古いところだと「おしん」という大河ドラマも我々日本人の心には 深く響いたのだと思います。 (ちなみにAC物語の金字塔は「永遠の仔」です。) こういう慣習というか志というか・・・いわゆる耐え忍ぶ心を持っている・・・、 そして勤勉で、仕事熱心・・・そういう印象を世界に与え、 日本人というのは世界でも最も優秀な種族とされております。 阪神淡路大震災、東日本大震災の時などは略奪や暴動も起きず、 ひたすら皆で助け合って乗り切り世界中から大絶賛されましたよね。 耐え忍ぶ心が出来た背景としては、昔日本が敗戦国で皆貧しかったという歴史や、 世界で唯一核兵器の恐ろしさを経験したということ、もしかしたら 自己犠牲が当たり前だった戦国時代、つまり武士道魂の DNAから来ているのかもしれません。 誰かのために頑張る、何かの為に自分を犠牲にする。 人として誠に尊く美しいことです。そういう努力の積み重ねで、 戦後貧しかった日本は高度経済成長を遂げ、 今や世界で最も裕福な国になったんです。 まさに我慢が美徳の国、忍耐の国日本 と言えるかもしれませんね。 この国に生まれたことを誇りに思えると思います。 しかし、そういう考え方は聞き様によっては、以下のようにも聞こえます。 「皆辛いのだから、甘えてはいけない」 「泣き言を言ってはいけない」 「辛い状況でも、ひたすら我慢し、 頑張ればいつかは報われる・・・。」 本当に努力が報われれば今までの苦労も吹き飛ぶんだと思います。 でも中にはいくら頑張っても誰からも認められずに、悪いほうにばかりに進む人もいるのです。 精神科医の視点からみると、人には皆ストレスに対する限界があり、 そのストレスが限界を超えた時に「適応障害」を起こします。 いわゆる、うつ状態や身体症状などをきたすんです。 この「適応障害」で重症になるのが「自分が無い人達」です。 子供の頃から我慢ばかりしていて、自分を犠牲にし、我儘も言えず、 甘えが許されなかった、そういう考え方を直接的にも、間接的にも 親に教えこまれた人達なんです。 彼らがその考え方に疑問を持たず大人になると、 色々と厄介なことが起きるんです。 自分の意思がはっきりしなくなり、自己犠牲によってしか、 自分の存在価値を見いだせない、 物凄く勤勉で、仕事も手を抜かず、常に周囲の人に気を配り、 トラブルを起こしたり、嫌われたりすることを必死に避ける。 誰かに必要とされれば、とことん自分を犠牲にするのに、 自分の為には頑張れない。 そういう考え方を「共依存」と呼び、 共依存的思考を持った大人達を「アダルトチルドレン」 (詳細は患者さんからの?「アダルトチルドレンとは?」を参照にしてください。) アダルトチルドレン達の生き方は、昔からの日本の教えに非常に近いです。 彼らは決して悪い性格ではなく、むしろ称賛されるべき存在であり、 今の日本経済をどん底から発展させて、支えてきたのも彼らなんです。 (ACは日本人の60%以上に当てはまると言われております) これこそ日本人のあるべき姿、日本人の真髄なのかもしれませんね。 当に「AC大国、日本」なのかもしれません。 これから話す話は、そんな運命に左右され、我慢に我慢を重ね、 自分を見失い、疲れきって私のところに来たアダルトチルドレン達の物語です。 彼らの生き方は人としては、とても素晴らしく、賞賛せずにはいられません。 でも人生というのは非情であり、時に彼らの人生そのものを押しつぶすこともあるんですね・・・ もし彼や彼女が自分だったら・・・・こういう時どうするだろう?・・ と当てはめて読んでみて下さい。 (内容がかなり重いので、患者さんの年齢や経過、職歴などは変えてあります。) |
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